画面の奥からぐすりと鼻を啜る音が聞こえる。顔を見ることは叶わないが、おそらく泣いているのだろう。信じてたのに。胸の底から絞り出すような涙声だった。だから言ったのに。口から出かかった言葉を何とか押しとどめながら「うん」と小声で相槌を打つ。

 頻繁に呼び出す携帯のコールに、不自然に席を外す心惹かれあっていたはずの彼。付き合いたてのころはお互いが休みの度に会いに行くような蜜月を過ごしていたのに、最近は仕事が忙しいからとデートの約束すらままならなくなった。服の趣味も出会った頃に比べてまるで変わって、おまけに女物の香水の残り香付きだ。彼が他の女と歩いていたという知人による情報提供は一つや二つの話ではない。数えきれない証拠に痺れを切らした私は別れたらと何度も言ったのだ。そいつ、浮気してるよと。

「でも好きなの」

 恋というものはとても厄介だ。周囲の説得の言葉がどんな真実味を帯びようとも、彼女の気持ち一つで全てが否定される。そのもどかしさに何度唇を噛んだことだろう。最終的な結論としては、私の言葉は何もかもが正しかった。言い逃れできない決定的な現場を、彼女は恋人である彼の部屋の寝室で目撃してしまった。強固な思いで築き続けた彼女の願望は、否定しようのない現実の前に崩れ落ちる。もう好きではないのだと告げられた一言が致命傷だったと彼女は言った。

 瞼を閉じる。暗闇の中で彼女のすすり泣く声が聞こえる。一つの恋を失ったばかりの彼女だ。私の言葉がたとえ正論で揺らがない真実だったとしても、これ以上追い打ちをかけたくはなかった。

「ミカグラ島への旅行はどうするの。来月二人で行く予定だったんでしょう」
「……一緒に付き合ってくれる?」

 あからさまな話題の転換だったが、彼女はすんなりと話しに乗る。おっと、そこは前向きなんだと声に出さずにちょっと笑った。ずっとずっと行きたいと話していたもんね。それこそ彼女が彼に恋に落ちる前から、彼に出会う前から。

「上司に嫌味を言われながら同僚に必死に頼み込んで、どうにかもぎ取った休暇だよ。あの世界の歌姫のスイのコンサートのチケットをミカグラ島で取れただけでも奇跡なのに、行かないなんて選択肢ない」

 本調子が少し戻ってきた彼女に、付き合うよと私は答えた。なんとなくこうなるだろうと予感していたから、死に物狂いで彼女と休みを合わせていたのだ。どこに行くか決めておいてよと宥めるように私は囁く。あなたほど私ミカグラ島には詳しくないんだから。

「ミカグラ島行きの飛行船で行われるショーはね、すごく評判が良いの。もちろんスイのコンサート会場のアッカルド劇場はもっともっと華やかで。劇場付近の歓楽街も夜はネオンライトで宝石箱みたいになるんだって。私、その中を練り歩いてみたい」
「そう、良いじゃない」
「それにミカグラ島の料理もすごく美味しいらしいし。食べたら思わず歯が零れ落ちそうになるくらいに甘い『はずれまんじゅう』っていうお菓子もあって、超甘党の私には絶対に外せないよね。あと、アマアマ★ルールーっていうカフェもあって、もう店の名前からして私の好みど真ん中だからどうしても行きたい」
「うん。行こう行こう」

 まだ涙声ではあったものの、彼女らしい軽やかな口調だ。

「それと最近インターネットで知ったんだけど、縁結びにご利益があるっていう噂の居酒屋も気になってて」
「縁結びにご利益のある居酒屋?」
「なんでも周囲にはとっくに結婚したと思われていた二人が、実は付き合ってすらなかったらしいんだけど、それが明らかになった当日に公開プロポーズをして結局そのまま結婚したっていう逸話がある居酒屋で」
「……ごめん、なんて?」

 

ウソみたいなホントの話


 男が部下である後輩に深刻な表情で「大事なご相談があります」と呼び出された時点で薄々のところは察していたのだ。それはこの組織である程度上の立場になれば必ず経験する言わば恒例行事のようなものだ。確かこの後輩の男が自分の組織に入ったのはおおよそ三ヶ月前で、時間的には至極真っ当なところだなと冷静に考える。

「チェズレイさまとモクマさんの関係についてのことか?」
「!?」

 何故分かるんですかとでも言いたげな驚いた表情だった。あからさまに動揺した男にこの組織においてポーカーフェイスを保てないところは減点対象だぞと言いかけたが、それならば話は早いですとすぐに気持ちを切り替えられた点は評価出来るので口を噤む。

「あのお二方は……その……お付き合いをされていらっしゃいますよね?」

 男は真剣そのものの表情で何かを神に許しでも乞うように切に訴えてくる。分かる、分かるよその気持ちと内心では同情しつつも、ここは上司として部下に純然たる真実を諭してやらなければなるまい。重苦しい雰囲気を纏わせつつ、口を開く。

「残念だが、チェズレイさまとモクマさんはそういう関係ではないようだ」
「うっ、嘘だ!!」

 悲鳴にも似た叫び声だった。嘘、嘘ですよねえと男が自分の両肩をがしりと掴みながら大きく揺する。お互いの目が至近距離でかち合ったところで、瞼を閉じて全てを否定するようにふるふると首を振った。そんなあと絶望したように男はコンクリートの床に膝をつけてがっくりと項垂れる。慰めるように男の肩をぽんぽんと叩いた。悲壮感に満ちたこんな光景を自分はもう何度見たことだろう。昔は指折り数えていたこともあったけれど、とうの昔にやめてしまった。

 どうしてこの二人は一緒にいるのだろう。

 自分の過去を振り返ってみると恵まれた人生だったとは決して言い難い。家族と呼べるような近しい存在は物心がつく頃にはすでにいなかったし、知らない子供や大人と一緒に身を寄せては今晩の食事にも困るような毎日だった。暴力や強盗まがいの行為を目にするのも珍しくなく、過酷とも言える環境のなかそれでもこれまで五体満足で生きてこられたのはただただ自分の運が良かったのだろう。

 裏の界隈で最近勢力を増しつつあるこの組織の一員になったのは、結局は成り行き任せだ。今まで仕えていた雇用主とその組織が今のボスによって壊滅状態に追い込まれ、行き場をなくした自分は未練もなくあっさりと今の組織に寝返った。長いものには大人しくまかれる主義で、それが自分にとってこの世界を生き抜いていくための手段の全てだったのだ。

 組織の末端の構成員であった自分でも、二人の暗躍ぶりはかねがね聞いていた。悪党と名高い「仮面の詐欺師」とその側近である「無敵の武人」。今の闇の世界でこの二人の名を知らない者はいないはずだ。

 チェズレイ様は噂に違わず見目の麗しい人だった。一寸の狂いもなく整った顔はまるで彫刻品のようで、周囲の光の粒子を全てかき集めて纏ったような長い金色の艶やか髪に誰もが引き込まれた。ただ単に容姿端麗であるばかりではなく、桁違いに頭も切れる。頭脳明晰で冷静沈着。下された作戦にはただ一つの綻びもなく、一手先どころか常に数手先のことを見通していたことを知るのはいつだって全てが終わったあとだ。

 どれだけ過去を積み上げてもみすぼらしい自分とは真逆の、神様に愛された完全無欠の存在。

 我らがボスは完璧だった。彼の純然たる美しさは多くの者を魅了したし、同時に数多の敵対者を破滅へと追い込んだ。人心掌握の手管に長け、己の意のままに人の心を操るチェズレイ様は誰よりも強かった。優雅に旋律を奏でるあの長い指先一つで、きっと世界なんて簡単に壊してしまえるほど。

 対してモクマさんの第一印象としては、チェズレイ様と肩を並べるにはあまりにも不釣り合いすぎるというのが正直な感想だった。「無敵の武人」などという大仰な異名を持つ彼だったが、その認識を目の前の人物を照合させるのは困難を極めた。へらへらとした笑顔と警戒心の欠片もない振舞いからは、毎晩のように夜の街に繰り出しては、しみったれた居酒屋でちびちびと一人酒をしながら暇を持て余しているような、どこにでもいるおじさんにしか見えない。昼はショーマンとして二足の草鞋を履いているらしいが、そのせいもあって「無敵」という言葉にはほとほと遠く見えた。

 だが共に第一線の出てみれば自分の評価ほど当てにならないものはなかった。圧倒的な数の敵対者がいくらモクマさんを囲もうとも、次の瞬間には皆屍のように地面に横たわっている。目にも留まらぬスピードと圧倒的な技の切れ味にただただ呆然とするばかりだ。いつもの調子で「大丈夫だった?」などと気遣いの言葉を口にするが、あれだけの激しい戦闘の後にも関わらず息切れの一つも起こしていない。この人が敵ではなく味方であって良かったと心から思った。自分などが彼に対抗しようものならきっとひとたまりもなかっただろう。

 毛色は違えど、チェズレイさまもモクマさんも強い人だった。彼らの強さの前では自分の力など到底及ばないであろうし、比べようとする気力もなかった。胸中を占めていたのは強い憧れと羨望。もし、もし自分があの二人と同じくらいに強かったのなら、きっと何も奪われなかったのに。たとえ奪われても奪い返せたはずなのに。そんな思いがふとこみあげてくる。泣いてまで奪われたくなかった大切な何かを、今はよくもう思い出せはしないのだけれども。

 どうしてこの二人は一緒にいるのだろう。不思議でたまらなかった。一人でも道を切り開いていける強さがこれほどまであるというのに。どうして。

 大腿部に数針を縫う怪我を負ったのは完全に自分の不注意からだった。対抗組織の残党を完全に排除したと思い込んだ隙を案の定狙われた。それでもこの程度の怪我で済んだのは傍にいた構成員の素早い援護と適切な応急手当があったからだ。油断が招いた傷にしては代償が大きいが、足を失わずに済んで本当に良かった。ベッドの上で上半身を起こしながら、包帯に巻かれた太腿をぼんやりと眺める。鋭い痛みと熱は傷口を原点として全身に広がり、数日間はその苦しさにのたうち回った。この状態で任務にあたることなど勿論出来るはずもなく、しばしの暇をほぼ強制的に与えられた。しばらくは苦痛に悶え苦しむ毎日だったが、三日前を境にしてようやく峠を越えたようだ。大事をとって復帰するのは来週からというのがボスの伝言で、至極真っ当な判断に従う他は無かった。

 嫌だなと一人掠れた声で呟いた。こういう時間はいつだって取り留めなく悪いことばかり考えてしまうから。たかだかこんな怪我くらいで、自分がこの組織に見捨てられはしないだろう。そんなことは分かりきっている。でも今回たまたまそうだったとしても、次も同じだとは限らない。何の根拠もない焦りが、不安という大きな魔物に姿を変えて満身創痍な己に襲いかかる。自分は運が良かっただけ。もしもっと大きな致命傷を負っていたら、自分というちっぽけな存在など見放されても仕方ない。

 コンコンと軽く部屋のドアが叩かれた。我に返って慌てて「どうぞ」と声を返す。

「やあ、調子はどうだい? おっ、もう起き上がれるようになったんだ。さっすが、若いって凄いねえ」

 そう言って扉からひょっこり顔を出したのがモクマさんだったので、ぽかんと口を開けて固まってしまった。いつもは同僚の構成員が交代で自分の様子を確認しに来ていたが、こやってモクマさんが自分の部屋に訪れたのは初めてのことだった。たいして偉くもない末端の構成員のところに、何故ボスの片腕とも言えるモクマさんが? 動揺する自分とは裏腹に、モクマさんはまるでそうするかが当然のようにずかずかと部屋に入り込む。そしてベッドに備え付けのサイドテーブルに何かを置いたかと思えば、そのまま傍にあったスツールに腰を掛けてしまった。

「なかなかお見舞いに来れなくてごめんね。ほんとはもっと早く来たかったんだけど」
「いえ……そんな、滅相もありません。モクマさんこそお忙しいのに、どうしてこんなところに」
「はは、そんなに悲しいこと言わないでよ。仲間でしょ。チェズレイも来たがってたんだけど生憎都合がつかなくてね。心配してたよ、お前さんのこと。それでもってこれをお前さんにと託された」

 サイドテーブルに置かれた木製とレイには一人前の小ぶりの土鍋が乗っていた。小さな蒸気口からは白い湯気が立ち込めていて、そこから香ばしい匂いが漂ってくる。途端熱と痛みでここ数日間まともに食事が取れなかったことを思い出した胃が、くうと情けない音を立てた。

「も、申し訳ありません」
「お腹が空くのは体が元気になってる証拠だからね。ささ、遠慮せずに食べて。チェズレイも大好きなおじさん特製のきつねうどんだよ」

 促されるままにぱかりと土鍋の蓋を持ち上げると、底が見えないくらいに白い麺がみっちりと詰まっていた。中央には綺麗な黄色の半球が透明なうどんにぐるりと守られるように囲まれている。

 いただきますと声をかけてから、おずおずと箸を持ち上げる。先端で掴み上げたあたたかいうどんを、そっと啜った。口の中いっぱいに柔らかいうどんの感触と旨味の染みた出汁が広がっていく。信じられないくらいに美味しくて、無我夢中でうどんを搔き込んだ。

「そんなに急がなくてもうどんさんは逃げていかないよ。何ならおかわりだってあるし。……泣くほど美味しかった?」

 気づけば目から溢れ出した涙がいくつもの水脈を作って頬を伝っていった。自分の顔を覗き込んでくるモクマさんの表情はとても穏やかで、でも前にチェズレイさまが苦言していたとおりちょっとデリカシーがないなと少し思った。

 そしてきっとこれは一生忘れること出来ない味だとも。





 これまでの迷いがふっきれたように無我夢中で任務をこなしているうちに、いつの間にか組織の中ではそれなりに責任のある役を任されるようになっていた。

「おっと、もうこんな時間か。ちょっとチェズレイ様とモクマさんの様子を見てくるよ」
「今夜はこれ以上の動きはないだろうから、今夜はそのままあがっていいぞ。お疲れ」
「そうか、じゃあお言葉に甘えるよ。ありがとな。お疲れさま」

 同僚と軽く挨拶を交わしてから仕事部屋を後にし、数日に渡って拘束されていた任務からようやく解放されてほっと息をつく。だがこの後が一番の大仕事だと己に言い聞かせて、きゅっと身を引き締めた。足を向けるのはおそらくボス達が現在滞在しているであろう彼らのプライベートルーム。胸元のポケットに密かに入っているカードキーは、組織の中でも持つ者が限られていて、それは我らがボスの信頼の証でもあった。

 建物の一番奥の部屋のドア付近の小さなパネルにカードキーをかざすと、かちりと鍵が開錠される音がする。コンコンと扉を数度ノックする。予想通り案の定部屋の中からは返事が無かった。失礼します、と声をかけてそっと部屋のドアを開ける。薄暗い部屋の中には壁にかけられたつけっぱなしのモニターが光っていて、直前までチェズレイさまとモクマさんが楽しんでいたであろうゲームの画面が映し出されている。そして真正面の大きなソファの上では気持ちよさそうにすやすやと眠っている二人の姿が。

 この人達また一晩中ゲームをやっていて、そのまま寝落ちしたな。

 こんなところで寝ていると風邪を引きますよと溜息をつきながら、大きなブランケットを取り出してふさりと二人にかけてやる。床に転がり落ちていたリモコンを拾い上げて、ぷつりとモニターの電源を切った。ゲームの激しい音楽も同時に途絶え、部屋には彼らの安らかな寝息だけが響く。お互いに多忙すぎてなかなか二人きりの時間を取れないのはわかるが、ここぞとばかりに際限なく遊び尽くすのはどうかと内心思う。ちょっとは加減を覚えて欲しいというのが本音だった。

 楽しい時間を過ごせたのか、チェズレイ様もモクマさんの寝顔も幸せそうだ。

「……こんなに安心しきって。寝首でも搔かれたらどうするんですか」

 そんなつもりは毛頭ないくせに呟いてみる。言いながらいつの間にか笑っている自分に気が付いて、少し驚いた。ああ、そうか。そうだったんだ。

 ずっとずっと強くなりたかった。強くなればもう奪われることはないと思ったから。自分はきっと誰かに優しくしたかったし、誰かに優しくなりたかった。そう思う自分自身を誰よりも何よりも奪われたくなかった。そうか、だから誰よりも強いこの二人はこうして一緒にいるのだなと分かった。お互いに優しくなれるから、優しく出来るから。そんな自分を愛しく思えるから。

 ぽろぽろと涙が目尻から零れ落ちる。大の男がこんなふうに泣いてしまうなんてみっともない。でも今だけは許して欲しい。これは多分人生で初めての嬉し泣きというものだから。

 このお二方は何があっても自分が守る。全身全霊で優しくする。今そう決めた。だからチェズレイさまとモクマさんがどのような関係であろうと、そんなもの何の障害にもならない。お二人の為に全てを尽くす覚悟だ。



 チェズレイ様とモクマさんに偏見などあるはずがありません。だからどうか教えてください。

「あのお二方は、お付き合いをされていらっしゃいますよね?」
「残念だが、チェズレイさまとモクマさんはそういう関係ではないようだ」
 決死の思いで打ち明けた秘密を真っ先にその時の上司に否定され、「嘘だ!」と叫びながらその場に崩れ落ちた日がもう随分と遠い日のことのように思える。

 あの決意からもう幾ばくかの時がすぎ、今やその質問に自分が答える立場になったのだと思うと感慨深い。床に座り込んだまま震えている部下に、苦笑いしながら同じように腰をおろした。

「そう落ち込むなよ。今はあの二方は気のおけない相棒以外の何者でもないかもしれない。でも、これから先のことは誰にも分からないだろう?」

 慰めの言葉を口にすると、途端に部下がばっと顔を上げ食い入るように自分の目を見つめる。暗闇の中で一縷の光を見つけたように、男の目の色が変わった。

「お前はどんな形であってもチェズレイさまとモクマさんのお力になりたいのだろう? あのお二人がそうなるのが何年、何十年先であろうが、お前の気持ちは変わらない。そうだろう?」

 組織に入りたての頃のこの部下もまた昔の自分と同じ目をしていた。世界の全てを敵だと思わんばかりに睨んで、弱い自分を隠したくて虚勢を張って。誰かを信じたいくせにその気持ちに気づかずに誰も信じないとうそぶいて。そんな過去の自分と今の自分がもし仮にお互いにこうやって正面から会ってみたりしたらどうなるだろう。あまりの変わりように「嘘だ」と喚き立てるかもしれない。それを笑いながら「本当だ」と言ってのけるのだ。いつ死んでも構わないと、運が良かっただけで決して幸せではなかったことに気づいていた自分に、いつしかこうして笑える日が来るのだと。

 また誰かに優しくなれるのだと。

「……そう、そうですよね」
「そして、そういう気持ちを持っているのはお前だけじゃない。チェズレイさまとモクマさんの関係にもし今以上の名前がついた時には、組織を挙げて盛大に祝うつもりだ」
 落胆していた男が自分の言葉に力強く頷き、すっと立ち上がる。

「オレ、頑張ります。これからもこの組織に、あのお二人のお役に立てるよう精進します!!」
「うん、いい心がけだ」

 いつも通りにうまく事がおさまったなと思ったと同時に、胸の中のタブレットが震えた。自分だけではなく目の前の男もそそくさとタブレットを取り出したので、おそらくチェズレイ様からの業務連絡だろう。現在休暇中の二人はミカグラ島を訪れているはずで、その間に連絡があるのは珍しい。末端であるこの部下にまで届くということは、このメールは組織全体に送られたものだと推察出来る。一体何の連絡だと疑問に思ったが、考えるよりもメールを確認した方が早そうだ。

 タブレットの画面をすいと指先で滑らかになぞる。

「えーっと、なになに。構成員の皆さんに大事なご報告があります?」



 生きてきた環境も境遇も全く違うだというのに、どうしてこうも相手の考えが分かってしまうのだろうとアーロンは辟易とする。仏頂面のアーロンとは対照的にタブレットの画面の向こう側にいるルークは終始笑顔だった。

「アーロン。君、ちゃんと聞いているかい?」
「さも嬉しそうな犬の声ならちゃんと聞こえてる」
「そう、嬉しい。僕は嬉しいんだ。だってようやくだ。ようやくモクマさんとチェズレイが結ばれたんだ。本当にこんなに嬉しいことは無いよ!」

 感極まった声をあげるルークにアーロンはしまったと一層表情を険しくさせた。嫌味を返したはずが、完全にやぶ蛇だった。おまけに「蛇」という単語にクソ詐欺師の顔が連想され、アレルギーまで発症してしまう。体のあちこちに蕁麻疹が集団発生している感覚に何とか耐えているが、全身に病が至るまでは時間の問題だった。

 兎にも角にもアーロンとクソ詐欺師は根本的に合わないのだ。お互いがお互いに対してそう思っていることについて異論はない。だがその思考とは裏腹に周囲に、特にルークに、「二人は仲良し」と誤解されるのは一体何故なのか。信憑性のない噂をされるのは慣れているが、これはあまりにも事実とかけ離れすぎだ。

 ただ頭の切れるアーロンにとっては、心当たりがなくもないのだ。二人の思考は大体のところで真逆の結果に至る。つまり道に迷ったときにアーロンが右に曲がれば詐欺師は左に曲がるし、前に進めば後ろに下がる。裏を返せばアーロンが絶対に選ばないであろう道を詐欺師は選ぶということだ。相手の思考は自分とは必ず正反対になるという理論は返って分かりやすいとも捉えられる。

 そんなアーロンだからこそ何が仮面の詐欺師だと嗤ってしまう。アーロンからしてみればあの男は何も隠せてはいないし、何も騙せてはいないのだ。詐欺師の嘘などアーロンには丸分かりで、だからこそ奴の飄々とした態度に辟易としてしまう。

「でもさ、正直思うんだ。実はモクマさんとチェズレイは実はとっくにそういう仲になっていて、でも僕には何かの理由で話せなかったんじゃないかって」
「アホか。それはねーだろ」
「なんで君に分かるんだ?」
「嫌でも分かんだろ」

 それこそ今まで手に入れてきた宝石と何ら変わらないとアーロンは思う。本物と偽物の輝きの違いなど歴然としていて、アーロンの目は誤魔化せない。画面越しに何とも晴れ晴れとした表情で私達結婚しましたと報告する二人も、それを涙ながらに喜ぶ馬鹿犬も。いつだって真実を見抜くアーロンだからこそ、その笑顔が嘘かそうじゃないかぐらい簡単に分かる。

 アーロンとクソ詐欺師においてお互い永遠に分かり合うことはないし、未来永劫理解したいとも思わないだろう。 でもだからと言って奴の晴れの日を祝ってやらないほど、アーロンは薄情でもないのだ。



 聞いていた評判通りにミカグラ島は素晴らしい所だった。当初は観光客を楽しませる為だけに人工的に開発された島というイメージだったが、一度足を踏み入れてしまえば簡単に覆された。島のあちこちに自然が残っていて、近代的な建物とうまく融和している。洋服姿と着物姿の子どもたちが近くの公園で鬼ごっこをしているのを見かけたが、おそらく島の住民だろう。何となくだけどミカグラ島は島の住人に愛されているのだと思う。子どもたちが屈託なく笑っていられる場所とは、得てしてそういうものだ。

 天候にも恵まれ、絶好の傷心旅行日和だ。

「ねえ! これからこの時計台に行こうよ」
「え? 今日は歴史館に行く予定だったでしょ」
「おっとそうだった。よし、それじゃあ両方行こう」
「接続詞の使い方が間違ってない?」
「そうかも!」

 言いながらけらけらと笑う彼女の姿に私は少々呆れたように肩をすくめる。ミカグラ島に来てからというものの、彼女はずっとこの調子だった。こっちこっちと観光マップを持ちながら小走りに歩道を進む。ちょっと待ってよと言いながら私も彼女を追いかける。まるで初めて外に出た子供のような大層なはしゃぎっぷりだった。

「……わっ」
「危ないなあ。転ばないように気を付けてよ」
「分かってる。それは分かってるんだけど、楽しくて」
「うん、見れば分かるよ」
「本当に楽しくて、楽しいから」

 この島に降りてから彼女はとても元気だった。元気で、明るすぎて、いささか不安になるくらい。

「でも彼は私と一緒にいても楽しくなくなっちゃったんだね」

 表面張力でこらえていた水面がまるで最後の一滴を加えられたとばかりに、彼女の瞳から涙がはらはらと零れ始める。やっぱりなと私は思った。見事なまでな空元気はきっといつまでも続かないだろうと予想していたから。

「あーもう、こんなところで泣かないでよ」
「……だってえ」

 道の真ん中に立ち止まって彼女はさめざめと泣き始める。慌てて彼女の背中を上下にさすってみても、溢れ出る彼女の涙は止まらない。体中の水分を使って、彼女は悲しさとやるせない感情を世界に打ち明ける。ああ、どうしよう。こんなふうに泣く彼女を見るのは初めてだった。お願いだから、そんなふうに泣かないでほしい。まるで自分が世界にたった一人きりになってしまったような、そんな泣き方は。

「失礼」

 どうすることも出来ずに身動きが取れなくなった私たちの間に、すっと誰かが割り込んだ。突然話しかけられて驚いて固まる私達に、どうぞこちらへと道の端へと誘導する。彼女を宥めることに夢中になって気づかなかったが、私達は道行く人の注目の的になっていたようだ。天女の羽衣が流れるような綺麗な金色の髪だった。おそらく私達を助けてくれたのだろうと思う。だが私にはミカグラ島で偶然出くわすような知り合いはいないし、目をぱちくりとさせている彼女も多分同じだった。

「突然会話にお邪魔してしまってすみませんでした。ただ、あのままあちらの場所にいらしたら人と衝突してしまう危険性がありましたので」

 人通りの少ない歩道を少し外れた空間に三人で身を寄せた後、私は改めて恩人の姿を確認した。すらりとした長身の眉目秀麗な青年だった。特徴的なアメジストのような紫の瞳には、傍らにだけ皮膚にガラスの破片のような煌めきが刻まれている。その模様がとても彼に似合っていて、思わずため息が出る。同じ世界に生きているとは思えないほどの美しい顔と造形だ。そのままうっとりと見惚れかけてしまったが、自分たちの状況をはっと思い出し、まずはお礼が先だろうと我に返る。

「いえ、とんでもないです。むしろ助けていただいてありがとうございました」

 お礼を促すように隣にいる彼女の腕をつついてみたが、先ほどまで大号泣していた名残のせいか上手く声が出せないようだ。あ、う、と何とか声を出そうとする彼女に向って、その青年は掌で軽く制止を促す。そして振り子のように緩やかな動きでポケットに手を差し込んだ青年は白いハンカチを取り出し、彼女にそれを差し出した。

「どうぞ。このハンカチを使って涙をお拭きください」
「……え、でも」
「悲しい思い出ではなく楽しい思い出を。このミカグラ島では出来れば後者の思い出をたくさん作っていただきたいので」

 ぐいと押し込むような形で再度ハンカチを差し出され、彼女が思わず受け取ってしまう。この一連の流れのせいで彼女の涙は完全に引っ込んでしまっていたのだけれど、それには言及せずにからからになった声で彼女は今度こそお礼を述べた。

「あ、あの、ありがとうございます。是非お礼をさせてください」
「お気になさらないでください。私がやりたくて勝手にやったことですので」
「いえ、そんな訳にはいきません。せめてお名前だけでも」

 懇願するように彼女がその青年の名前を尋ねると同時に、どこからともなく「チェズレイ」と誰かを探しているような声が聞こえた。その音にぴくりと一番に反応したがその青年だった。顔を上げて誰かを探すような素振りを見せて、そして何か素敵なものを見つけたかのように、花が綻ぶように青年は緩やかに微笑む。

「チェズレイ、此処にいたのか。やっと見つけた」
「おや、モクマさん。待ち合わせの時刻より五分遅刻ですよ」
「ごめんね。昔話をしてたら盛り上がっちゃって」
「それはそれは、楽しいひと時を過ごせたようで何よりです」

 袴を着た白髪交じりのおじさんが人混みを抜けて、こちらに向かってぴょこぴょことやってくる。会話から察するに多分名前を呼んでいた方がモクマさんで、私達を助けてくれた恩人がチェズレイさんなのだろう。押し問答を覚悟したが、あっさりと名前を手に入れてしまったのでついつい拍子抜けしてしまった。

「それで、こちらのお嬢さん方はどうしたの? 見かけない顔だけれども」
「ミカグラ島を訪れた観光客のようです。道に迷っていたようでしたので、少しばかりご案内を」

 チェズレイさんは私達が手にしていたガイドブックに視線を投げ、それを追ったモクマさんが納得したように相槌を打つ。道の真ん中で泣いていたという事実をそれとなく隠してくれていたのは分かるが、あまりにもさらりと嘘をつくものだから逆に感心してしまった。

「へえ、そうなんだ。お嬢さん方、折角この島に来たからには楽しんでいってね。ミカグラ島は本当に良いところだからさ」
「おや、二十年里帰りをしなかった人の言葉とは思えませんねェ」
「えへ。それは言わない約束でしょ」

 罰の悪さを誤魔化すように頭を搔きながらへらりと笑うモクマさんに、仕方ないなというようにチェズレイさんが嘆息する。呆れたような仕草のようにも見えるが、チェズレイさんがモクマさんを甘やかしているようにも思える。にこにこと笑い続けるモクマさんに、つられてチェズレイさんも頬を緩めた。

 ……なんだろう、この空気。彼らの会話の内容には何も不自然な点はないのに、妙な居心地の悪さを感じてしまう。あれだ。仲が良すぎる両親を見てしまった気恥ずかしさとか居たたまれなさに近い感情。ちらりと視線を横に移せば、彼女とばちりと目が合った。多分彼女も同じような気持ちなのだろう。

 年齢もタイプも全く別で同じ空気を吸っていることすら異様なはずなのに、他愛無い会話をしている二人の姿が、まるで最初からそうあるべきだったように自然に見えてくる。

 他人の私にですら感じ取れる、交わす視線の奥に潜む深い情愛。

「ルーク達も待たせていそうだし、そろそろ行こっか」
「そうですね。では、私達はこれで」
「あ、でもハンカチが」
「そちらは差し上げます。どうぞ良い旅を」

 言うなり早々と歩き始めたチェズレイさんが軽く会釈し、モクマさんがまたねと笑いながらひらひらと手を振る。もう一度感謝の言葉を述べてお辞儀をするのが精一杯だった。彼らの後ろ姿が来た道の先に完全に消えるまで見送って、その直後緊張の糸がふと緩む。何か凄かったねと彼女が言葉を漏らした。それに私はこくこくと全力で首を縦に振る。

「周りにハートマークが溢れ出てたよね。あれであの人達は隠しているつもりなのかな」
「分からない。分からないけど、もうなんか本当に凄かった」
「分かる」

 分かるという言葉を何度も繰り返した、完全に語彙力を失った会話だった。

「……いいなあ」

 消え入るような小さな声で、彼女が言った。

「最初の頃はきっと私もあんなふうに笑ってたんだよね」

 そうだよ、と彼女にだけ届くような音で私は返事をする。涙は完全に止まっていたが、濡れた頬を労わるようにもらったハンカチを彼女はそっと押し当てる。

「なんだかあなたと出会った頃のことを思い出しちゃった。ねえ、覚えてる? 私達がまだ高校生の頃、放課後の教室で私が初めて話しかけた時のこと」
「勿論、忘れるわけないでしょ」
「あの時はびっくりしたんだよ。忘れ物を取りに戻ったら、椅子に座ったままぼろぼろと泣いている子がいるんだもん。最初は幽霊かと思ったくらい」
「それまでの私達、ほとんど話したこともないし接点も無かったもんね」

 彼女の言葉をきっかけに、遠い昔のことを思い出す。

 私が密かに宿していた、小さな恋が終わった日だ。誰もいない教室で、たった一人きりで泣いていた私。今考えればそんな馬鹿馬鹿しい話はないのに、まるで自分が世界の中で独りになってしまったような気がして。寂しいとか悲しいとかいう感情がないまぜになって、そんな気持ちを全身から吐き出すように私は泣いていた。唇を噛みしめて顔をくしゃくしゃにして、声を殺しながら。

 だからぼやけた視界の目の前に突然ぬっと何かが現れた時は本当に驚いた。それが可愛らしいピンクのハンカチだと知ったのは、袖口で顔を拭った後だ。

「びっくりさせてごめん。でも、なんかほっとけなくて。良かったらこれ使って」

 そう告げてぎこちない笑みを浮かべて号泣する私にハンカチを渡してくれたのが彼女だった。

 自分でも現金な話だと思う。慰めるような労わるような彼女の優しい微笑みに、私はすべてがいっぺんにどうでもよくなってしまった。たかだかあんな失恋ごときに、何をうじうじと思い悩んでいたのか。彼女の笑顔は私にとってそれほどまでに鮮烈だったのだ。

「不思議だよね。当時はもっと仲の良い子達もたくさんいたはずなのに、今はこうしてあなたと二人で此処にいる。あの時から何年経っても」
「そしてもう大人になった私だからこそ、こうしてあなたに渡してあげられる」

 はいこれ、と言いながらポケットからあの時よりもっと濃い桃色ハンカチを彼女に差し出す。彼女はちょっと驚愕したように目を大きく見開いて、でも嬉しそうにそのハンカチを握りしめた。

「自分の分も合わせてハンカチが三枚になっちゃった」
「いくらでも持っておいて。それぐらいあれば立ち直るまでには足りるでしょ?」
「うん。……ありがと」

 そうやって彼女は私に微笑む。あの時と同じ表情で、あの時よりもっと私にとって大きな存在となって。

 ねえ、今まで口にしたことはないけれど。私はあなたの笑顔が大好きなの。あなたが悲しそうな顔をしていると、私も泣きたい気持ちになる。その理由をあなたに言えるはずも、伝えるつもりもこれからも永遠にないけれど。だから私はあなたと一緒にこの島に来た。

 あなたにこれ以上泣いてほしくなくて。笑っていてほしくて。

「また、二人でこの島に来ようね。来年でも再来年でも。私達がおばあちゃんになっても」

 はにかんだ表情で彼女は私に約束をせがむ。全く、人の気も知らないで。

 きっと彼女にはいつしか私以上に大切な存在が出来るだろう。だから彼女の約束のどこまでが本当でどこまでが嘘かは分からない。でも、どっちでもいいよ。その言葉が嘘であろうとなかろうと。私は彼女を信じるから。彼女がそう望むなら、泣きたい時があるのなら。その時はいつだって今みたいに付き合うから。

 これはずっと変わらない本当のこと。



「あー、疲れた。今日行くのはこれで終わりだったっけ?」
「もう一軒、例の縁結びにご利益のある居酒屋に行きます! 予約もばっちりしてあるので」
「夕ご飯には丁度いいかもね。その居酒屋は料理も美味しいんでしょ?」
「うん。もともと味には定評があったお店で、縁結び云々の噂が出回ってからは超人気店になっちゃって。予約取るの大変だったあ。キャンセル待ちで何とか取れた」
「居酒屋のキャンセル待ちっていう言葉がもう理解しがたいんだよね。大体縁結びにご利益があるっていう情報すらどこまで信憑性があるのやら」
「分かんないよ? 縁なんてどこで生まれるかも分からないし。もしかしたら居酒屋の中でばったり出会えちゃったりするかもしれないし」
「はいはい」

 彼女と取り留めのない世間話の続けているうちに、例の居酒屋に辿り着いていたらしい。一瞥するとどこにでもあるような普通の居酒屋だ。予約していた時間は開店直後に設定したこともあり、まだ人の気配は感じられない。店の入口をおそるおそる開けて、こんばんはと声をかける。いらっしゃいと明るい声が店の奥の方からすかさず響いた。

「予約していた者で、まだ時間はちょっと早いんですけど」
「あら、観光客の方かしら。いいわよ。今はまだ誰もいないから、どこでもお好きな席を。お勧めはあの辺りの席なんだけどね」

 キッチンと思われる通路から年配の女性の店員らしき人物がエプロン姿のまま私達を出迎える。縁結びの噂を聞いてこの店に来たんでしょう?と悪戯っぽくその店員に聞かれて、私達は素直にうなずいた。おそらく同じような女二人組の来客が多いのだろう。不純な動機の括りに入れられるのは少し恥ずかしいが、事実なので致し方ない。

 店員は随分と気さくな人で、店のメニューやおすすめなどを教えながら席を案内してくれる。カウンターの一番端の壁際の席だった。木目の温かみのある壁には、この居酒屋で撮影されたであろういくつもの写真が並べて貼られている。

「ほら、あれが噂の例の二人の写真よ。うちの亭主がカメラを構えたんだけど、素人ながらに結構綺麗に撮れてね。まさかこの写真がこの店の呼び水になるとは思わなかったけど」
「嘘、ほんとに? 結婚したっていう二人は実在したんですか?!」
「実在するも何も。今もよく一緒に店に来てくれてるしねえ。公開プロポーズって言われてるんだっけ? 私もその時その場にいて、その後に店のみんなで撮った写真。ほら、これが私で、結婚したのはこの人とこの人」

 一際大きな店の中での集合写真。店員がそっと指さした二人の姿に、私達は同時に息を呑んで、思わず目を疑った。

 だってそんな冗談みたいな話がある? 砂漠の中で一粒の砂金を見つけ出すような、奇跡みたいな幸運が。


「「え?」」


executed番外編:ウソみたいなホントの話。
モクマさんとチェズレイに関わる全ての人に幸運が訪れますように。

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